「ニッキン投信年金情報」に代表河合行宏の連載が掲載されました。
(05.07.04~05.10.11)

第01回第02回第03回第04回第05回第06回第07回第08回第09回第10回第11回第12回第13回第14回第15回

第01回 誰も売る気のないものを推進する

投資信託や個人年金保険の銀行窓販戦略を語る際に、「店頭販売比率」という言葉が頻繁に使われるようになりました。今や「店頭」は、銀行窓販の成功に不可欠なチャネルであり、非常に重要視されています。

店頭販売は、店舗網と、そこに常駐する女性行員を活用して銀行収益の拡大を図るビジネスモデルであり、私の在籍していた銀行では、100 店舗以上で300 人以上のテラーが毎月80 億円の投資型金融商品を販売し、ナンバーワン・テラーは年間に12 億円もの売り上げを達成しています。

最初から売れる環境などない

しかし、そこにいたる道のりは、決して平坦なものではありませんでした。お客様に「定期預金と国債」しかセールスできなかった「テラー」が、「元本保証のない商品」をどうやって販売するようになったのか。
地銀の窓販推進担当であった私の仕事の変化(=作戦の変化)をQ&Aの形で振り返りながら、窓口販売の有効性について改めて考えていきたいと思います。

「Q1 投信の窓販業務開始当初は、どんな状態だったのでしょうか」
「A1 多くの方が想像されたとおりです。ご多分にもれず私がいた銀行でも、投資型金融商品の販売環境は惨憺たる状況でした。たとえば当時の各部署の反応は……」

<銀行本部>
1.先行して販売している他行は、専門知識のある特殊な行員を採用しているはず。だから、今の行員には無理。
2.クレームの起きやすい商品であり、風評リスクの方が大きい。だから無理。

<営業店>
1.顧客に損をさせるかもしれない商品など、銀行では売れない。売らせない。
2.やるなら、証券会社から人を採用してやるべき。
3.店頭では、MMFでも説明に1時間。株式投信を売る時間などない。事務処理も面倒。
4.本業(法人営業、住宅ローン営業)が忙しく、そんな暇はない。
5.知識もなく、売れない。怖い、恐ろしい。

といったところ。

本部からの目標も示されない上に、株式投信への行員の体質的な拒否反応もあり、とても売れるような状況にはありませんでした。当初は、全体で毎月1億円販売できて喜んでいたような気がします。
以下はその後約3年間の足どりですが、これから15回にわたり、「店頭販売を軌道に乗せた」ポイントについて紹介していきましょう。

第02回 テラーが味方になってくれた

誰からも注目されない仕事

今では個人部の金融商品グループは花形(?)部署として、行内だけでなく他の金融機関からも注目されているようです。しかし2000年秋ごろは、営業店の仲間から「河合も大変な仕事だけど頑張れよ」などと励まされるような状態でした。周囲からも同情されるほど実績の上がらない業務を担当していたわけですが、力強い味方が現れました。

「Q2 力強い味方とは、ずばり誰だったのでしょうか」
「A2 第一の味方は、「郡部の支店長」です。現在、投資型金融商品で収益を上げることは、すべての支店の支店長の必達事項ですが、当時は違いました。」


そのころ最も重要視されていた業務は、法人業務と住宅ローンです。ところが法人数も人口も減少している地区では、何年にもわたり業績表彰などとは縁がなく、預金シェアの高さは預金保険料という、支店維持は人件費というコスト増大要因であるとさえ思われがちでした。その預金と人員を収益源に変えることのできる業務が、投資型商品の分野ではないか。そう理解していただいたわけです。

ここで数字をつくるしかない

そしてもうひとつの味方は、「テラー」でした。当時、世間はリストラ全盛期。銀行経営においても、店舗網の見直しや人員削減の必要性が叫ばれ、店頭で顧客満足を高めることは、「お客様を待たせずに早く手続きをすること」=「待ち時間の短縮」だと言われていました。ベテラン・テラーにとっては、まさに不遇の時代を迎えつつあったのです。そんな時、投資型商品の店頭販売に目を向け、「自分たちが収益に貢献できる初めての業務」と考えてくれるベテラン・テラーが現れたのです。

当時の私は、「この業務は大きくブレイクする」と信じていました。「注目されない仕事」=「外野に邪魔されずチャレンジできる仕事」であると捉えて、毎日が非常にポジティブであったように思います。そして現れた味方を生かし、以下のような作戦を立てました。

<株式投信に対するイメージアップ作戦>
1.顧客向け
 ・パンフレットや雑誌などを活用して、株式投信に対する知識を広める
 ・ポスターやパンフレット、キャンペーン企画などにより、商品の露出を増やす
2.本部向け
 ・株式投信の販売額目標を設定するよう働きかける
 ・本部職員に、株式投信を保有するよう働きかける
3.行員向け
 ・投信の有効性や、なぜ投資が必要か等について勉強会を実施する
 ・収益を得ることの重要性について、理解を深める


<店頭販売の体制整備>
1.「待ち時間短縮」主義との戦い―当時の銀行に蔓延していた「一番の顧客サービスは待ち時間を短縮すること」との認識を変える
2.ハードを整備し、投信端末を増設して、事務作業の簡素化を図る
3.セールススキル向上のため、実戦的研修や勉強会を実施する。販売支援ツールを作成する
4.本部内に、専門部署を設置する
このなかには実施できなかったことも、実施しても効果のなかったこともありますが、今後、順を追ってお話していくつもりです。

第03回 窓販専門部署の設立

仕事のできる環境をつくる

株式投信の販売で先行他社に差をつけられると、遅まきながら行内でも、投資型金融商品(株式投信や外貨預金、保険等)の販売を推進する専門部隊の必要性が理解されてきました。そして2001 年4月、ついに行員3名と証券会社出身者による10 名で構成される窓販専門部署「金融商品販売支援チーム」が設置され、私もそこに参加することになりました。

本店内のコールセンターの休憩室を改装して造った初期のチームの部屋は、狭い上に窓がなく、コールセンターのコンピュータの熱気がこもって、きわめて劣悪な環境でした。働く場所だけではありません。本部でも営業店でも、依然として株式投信にネガティブな考え方をもつ行員が少なくありません。専門組織が発足したからといって、ただちに理想どおりの活動が始まり、実績が上がっていくはずもなく、こちらの環境もとても良好といえる状態ではありませんでした。

個人部の企画グループに所属していた私が金融商品販売支援チームへの配属に立候補したことに対し、「河合は変わっている。企画からあんなところに行きたがるとは」と、上司からしみじみ言われたこともありました。つまり、これからも様々な作戦が必要だったのです。

「Q3 行内でも認知度の低かった金融商品販売支援チームを有名し、働きやすい環境にするために行ったことは?」
「A3 まず行ったことは、販売支援も求めていない営業店に対し、「金融商品販売支援チーム」という名称を使わないことでした。」


「きんばいチーム」の誕生

そこで、つけた名前が「きんばいチーム」。あえて汚いハエのような奇妙なネーミングでチームを目立たせ、全社の注目を集めようという作戦です。さらに、株式投信の販売実績を伸ばすため、以下のようなことを行いました。

①「マンスリーきんばいニュース」の発刊
郡部の支店の渉外担当やテラーの活躍や苦労、参考になるセールス話法、他行の動向などを集め、テラーから支店長まで興味をもって読んでもらえるような月間のニュースレターを作成しました。この「マンスリーきんばいニュース」は、1 年間にわたって続けました。

②人の気を引く地道な活動
厳しい環境下で苦戦する販売部隊を助ける組織として認知されるため、電話応対を始めとする営業店とのコミュニケーションを非常に大切にし、どんな遠いところでも喜んで勉強会に行くなど、誰からも愛される組織「きんばいチーム」になる努力を徹底しました。現在、多くの運用会社や保険会社のホールセラーの方が実施されていることですが、結構地道な努力です。しかし、こうした努力が認められ、2001 年の支店への応対が優れていた本部セクションのランキングで、第3位にまでなることができました。

③テラー向けセールス研修
また、同年7月には、セールスのスキルアップを狙いとした「テラー向けセールス研修」を実施することになりました。この研修は私のかねてからの念願であり、テラーの人たちが私たちのチームを信頼し、自分たちの味方であると感じるきっかけにもなった研修です。当初は正式な研修として認められず、自発的な勉強会の形でスタートせざるをえませんでしたが、現在も継続して行われ、店頭販売の実績アップに大いに貢献しているようです。研修の内容については、次回お話させていただきます。

ちなみにコールセンターの休憩室からは、業績を認められたのか1 年間で脱出することができました。まずは、めでたしめでたし。

第04回 店頭販売の優位性

店頭で売れること=売れない理由はない

株式投信の売り上げを伸ばすには、渉外担当による訪問販売以上に有効な方法はない。他行の販売戦略をヒアリングするまでもなく、渉外担当が動かなければ数字は増えないものと、当然のように考えられていました。しかし私が勤務していた銀行では、社内的に優先順位の劣る投資型金融商品を渉外担当者が積極的に推進することは難しく、テラーを中心に販売する作戦を続けるしかありませんでした。

したがって当時は、「テラーで販売実績を作る」=「株式投信はテラーでも売れる」=「渉外が売れない理由はない」という論法を実証することが一番の目標でした。しかし現実は、この論法とは違っていました。店頭販売には、渉外の訪問販売にはない多くの優位点があったのです。

「Q4 渉外の訪問販売と比べ、店頭販売が優れている点とは?」
「A4 実際に店頭販売を始めてみると、以下のような思いがけない優位性が浮かび上がってきました。」

課題も多いが、優位性も明らか

①事故やクレームが少ない
店頭の情報端末を活用できたり、本部や上席にもすぐに相談ができる環境にあるため、渉外担当に比べて間違ったセールスを行う確率が低く、コンプライアンス上、問題のない販売が期待できます。

②売上高の波が少なくなる
たとえ1人当たりの平均販売額が1百万円であっても、全支店の300 名以上のテラーが1人も約定できない日はありません。店頭販売の浸透とともに、日々のマーケット環境にもほとんど影響を受けない安定した売り上げが期待できるようになります。

③信託報酬が安定する
1 件1 百万円の積
④顧客へのセールス機会が多い
100 店舗の平均3 名のテラーが1 日10 人の顧客に対し新商品を1 ヵ月セールスすると、100 店×3名×10 人×20 日=60,000 人、20 人にセールスすると120,000 人の顧客に商品を紹介できます。渉外によるセールスに比べて商品の提案機会が圧倒的に多く、投資型金融商品を買っていただく可能性も必然的に高くなります。

⑤リピート客へのセールス機会も広がる
店頭販売では1 件当たりの販売額が少ないため顧客に十分な投資余力があり、新商品発売時やマーケット環境の動いた時が常にセールスチャンスになり得ます。逆に渉外による訪問販売は1件当たりの販売額が大きく、顧客の投資余力を奪う場合も少なくありません。いきおい顧客の負うリスクも大きくなり、販売方法やフォローの仕方によっては顧客を失うこともあります。

⑥どの店でも販売が可能
個人預金のない支店などありません。退職後の資産形成をめざす顧客の囲い込みも可能であり、どの支店でも実績を上げることができます(ただし従来のプロパー融資中心の出店や人員配置を変える必要はありますが)。

⑦追加コストがかからない
新たにお金をかけなくても、研修やセールスの仕組みさえ用意できれば、現状の人員で販売実績を上げることが可能です。経験者の中途採用も短期的に有効ですが、今在籍する人材を生かすことができるのが店頭販売だと思います。
以上が、私が実感した「店頭販売の優位性」です。ただし、店頭販売にも課題はたくさんあります。
次回は課題について説明しましょう。

第05回 店頭販売の課題

現在も課題は山積み

店頭販売の優位性については、前回のお話でご理解いただけたと思います。近年は定期分配型投信の活況などで、多くの金融機関の店頭でも株式投信や年金保険の販売実績が伸びていることでしょう。

しかし現在でも、店頭販売には多くの課題が残されています。とくに個人投資家の立場からすると、問題は非常に大きいように思われます。

「Q5 順調な販売実績の裏に隠された課題とは、どんなものでしょうか?」
「A5 販売員個人の問題も、銀行の組織としての問題もありますが、せんじ詰めれば「コンサルティングスキルをどう高めるか」という点に行き着くでしょう。具体的には、以下のような諸点です。」

投資家から見放されないために

①販売後のフォローができていない
証券会社と違って銀行には明確な担当者制がないため、販売後のきめ細かいフォローができていません。しかし銀行の店頭販売は数多くの顧客を相手にしなければならないため、「言うは易く行うは難し」といったところが実情でしょう。

そこで、店頭は新規顧客獲得のチャネルと割り切って、アフターフォローについては運用報告会等のセミナーを効果的に活用するのはどうでしょうか。運用報告書のDMにキャンペーンやセミナーの案内を同封するのも、一つの方法でしょう。それ以上のフォローが必要な顧客には、違うチャネルが必要かもしれません。

②専門知識が足りない
マーケットや税金など、投資型商品の販売に本来必要とされる専門知識が、銀行員全体にまだまだ不足しています。ことに、残念ながらベテランになればなるほど、知識の吸収力が落ちるのはやむをえません。

ただし、ベテランの販売力は貴重であり、その力を否定することはできません。継続的に訓練を重ね、販売実績だけでなく知識(銀行業務検定や資格)やコンプライアンス面も、評価の対象としていく必要があると思います。

③役職者の認識不足
従来の銀行にはなかった業務のため、内部役席、内部管理責任者、営業責任者など役職者の中に、いまだに投資型金融商品の販売に否定的な人達が多いのも事実です。それもあってか、問題やトラブル防止への対処力が弱い上席も少なくありません。こうした「文化」も、ある程度の時間をかけて変えていくしかないでしょう。

④中途退職者が多い
テラーはどうしても結婚や出産による退職が多く、スキルをたくわえた大切な人材が簡単に職場を去ってしまいます。やる気のある有能な女性を失うのは、非常に残念なことです。

⑤管理職の育成が必要
少数のスーパー・セールスレディーに頼ることなく、テラー全員が恒常的に販売実績を上げるのが理想とすれば、その人々を管理するマネジメントスキルは相当重要です。
ところが現状では、そうしたマネジメントスキルは体系化できていません。いま販売の最前線にいるテラーが管理職になる時にそなえ、マネジャー研修のシステム作りを急ぐ必要があります。

⑥コンサルティングの環境が未整備
今の銀行の店頭は、コンサルティング業務にふさわしい環境とはいえません。店舗レイアウトの変更やシュミレーションツールの補強など、いっそうの設備投資が必要でしょう。
いろいろ述べましたが、店頭販売で最も問題なのが販売員のコンサルティング能力であり、コンサルティングスキルを向上させるモチベーションの維持だと思います。次回はテラー研修についてお話します。

第06回 店頭販売成功のポイント1

店頭販売が増えた理由とは

ご多分にもれず私が所属していた金融機関でも、店頭販売が増えた一番の原因は定期分配型投信の導入にありました。「100万円で毎月○○円の分配金が期待できます」といった定期分配型商品の魅力が、多くの顧客の目を投信に向けたことは事実です。しかしそれだけなら、こんな連載は必要ないでしょう。

「Q6 定期分配型商品の導入以外で、店頭販売を増加させた原因は?」
「A6 とにかく、「店頭でセールスする回数を増やした」ことではないでしょうか。投資型金融商品は、こちらから声を掛けないと販売に結びつきませんから。」


販売員のセールス機会を増やすために

①販売員の増員と販売する場所の確保
まず銀行の方針として、すべての行員に販売資格を持たせました。当初はそれで店頭販売が伸びると想定していたかどうかは疑問ですが、これが第1の原因です。その後、販売窓口を増設できたのも、資格を持ったテラーをたくさん確保できていたからでしょう。

またセールスする場所という点では、当初は専用端末のある専用窓口に限られていましたが、既存のローカウンターを預金窓口と誤認されないように整備し、全店のローカウンターで投資型商品を販売できるようにしました。

これは販売ツールを工夫することで、専用端末など設置せずローコストで実現できました。しかし効果は非常に大きく、販売窓口は一挙に300 カ所も増えました。1 人のテラーが1 日20 人にセールスできるとすれば、1 日で6000 回もセールス機会が増えたことになるわけです。

②セールスしやすい仕組みづくり
慣れない商品をセールスすること、特に最初の一声を掛けることは、販売員からすれば非常に苦痛です。顧客から警戒されないためにもキャンペーンなどを企画し、セールスしやすい仕組みを用意して、セールスが苦痛でなくなるような条件を整えていきました。どんなに自信のないテラーでも、「キャンペーンがあるのですが」なら気楽に声掛けできるはずです。

③セールスに活かせるツールの充実
窓販開始直後は、運用会社から提供される販売用ツールは多種多様でした。コストのかかる紙芝居形式のものや、冊子タイプのものも多かったと思います。銀行本部も、立派なツールが販売に役立つという感覚だったのでしょう。しかし実際には効果的に使われず、捨てられたものも少なくなかったはずです。

そこで発想を切り替え、テラーが3分間で容易に反復セールスができ、顧客に誤解を与えず無差別にドンドン配付できるツールを運用会社の方と共同で作成しました。

それは、商品の4つポイントをA4判1枚の表裏にまとめ、図などを示しながら説明できるものでした。このA4判1枚ものツールは、後に説明します研修や支店勉強会のロールプレイで徹底的に利用した結果、店頭の販売実績は着実に上がっていきました。

A4判1枚ものツールはまず各支店に100~200 枚配付し、支店に在庫がなくなると100 枚単位で請求がきます。請求の多い支店=店頭販売実績が高い支店という傾向が現れたのは、本当に利用されていたからでしょう。

やがて同種のツールは他の金融機関でも利用されるようになり、運用会社の方からもコスト削減効果を喜んでいただきました。

余談ですが新しい販売支援ツールは、研修で利用方法を周知徹底してから配付すると効果的です。

ロールプレイで効果的な利用方法を認知できれば、まるで魔法のアイテムのような感じでテラーに使ってもらえるからです。

店頭販売成功のポイントはあと2回お話する予定です。ご質問などありましたら、お気軽に下記にお問い合わせ下さい。

第07回 店頭販売成功のポイント2

鍵はテラーのモチベーション

「テラーの方は、販売実績に応じて給与が上がるのですか」。多くの金融機関の方から、こんな質問を受けました。答えはもちろん「NO」です。また、最近はしばしば販売上位者に対する特別研修も行われていますが、多分これだけでは、テラーがこんなに動きだすことはなかったでしょう。

「Q7 どうしてテラーのモチベーションが上がったのでしょうか?」
「A7 ベテランテラーが本気になって投資型金融商品を販売する理由は、インセンティブだけではないはずです。もっとも、そんな「人参」などありませんでしたが……。」


投信販売でスポットを浴びる

2002年上期にリスク限定型投信の導入で爆発的に販売額が伸びた時は、渉外を中心に短期間で目標を達成する支店が目立っていました。ですから当時は、テラーの数字が販売額に影響を及ぼすという本部の認識はなかったようです。

もちろん店頭販売比率などという指標も存在していませんでした。個人の実績を集計していなかったため、支店ごとのの販売額はわかっても、誰が投資型金融商品を売っているかはイメージでしか捉えられていなかったのです。

しかし02 年下期になると、研修や支店勉強会でロールプレイを行ったテラーがメキメキと力をつけてきたことが実感できました。そこで全店の販売員の実績を件数、金額ごとに集計し、個人渉外、法人渉外やテラーなど担当ごとのランキングを社内LANで公表することにしたのです(むろん個人ランキングの掲載には反対意見も少なくありませんでした)。

ここでのポイントは、①販売金額よりも販売件数を重視したこと、②なるべく多くの方が掲載されるようにしたことです。

すると、予想どおりの現象が起きました。今まであまり注目されなかった郡部のベテランテラーや渉外担当、意欲的な若手テラーなどの名前が次々と掲載されることになったのです。

実績のある有名テラーや評判の高い行員だけでなく、それまで運に恵まれなかった人達に、急にスポットライトが当たったわけです。これは、多くの行員のやる気を刺激しました。

一方で02 年下期には、投信販売に対する渉外担当の注力が、他の業務に支障をきたしているとの見方が出はじめました。そこで、テラーの販売実績がいっそう注目されるデーターを公表することにしました。そうです「店頭販売比率」です。

店頭販売比率が低い=マネジメントに問題

店頭販売比率を公表した時点で、全店平均では件数の50%、販売額の30%が店頭で占められていましたが、支店ごとの数字が公表されると、今度は次のような現象が起きました。

まずは、店頭販売比率が高い支店の活動事例がブロックごとの会議などで紹介されるようになりました。すると店頭販売比率の低い支店の支店長や営業キャップから「きんばいチームさん、うちの支店もテラーの実績を上げ欲しい」という要望が急に増えました。

勉強会の依頼を受けてその支店に行ってみると、店頭販売実績が上がっていない原因はすぐにわかりました。「支店の雰囲気が悪い」「渉外とテラーのコミュニケーションが悪い」「テラーリーダーが超ネガティブ」などです。

つまり、販売の不振はマネジメントに起因することが多かったのです。「店頭販売比率が低い=店頭部門へのマネジメントができていない」という評価が行われるようになったのも、当然のことといえるでしょう。

こうして、店頭販売は非常に重要なものであるという認識が銀行全体に浸透し、販売員たちも従来とは違った尺度で評価されるようになりました。やる気になって、結果が正当に評価されればモチベーションは上がりますよね。

次回は、支店勉強会についてお話します。

第08回 店頭販売成功のポイント3

必殺仕事人部隊

「お願いですからテラーの実績を上げてください。」こんな支店長の依頼が増えてきました。しかし、そんな支店を訪問すると、「何しに来たの?」と敵意むき出しバージョンや「関係なーい」と何を言われても反応なしバージョンなど様々な難敵が待ち受けていました。

「Q8 そんな難敵に対し、モチベーションの上がる支店勉強会はどのように行ったのでしょうか?」
「A8 「実績を上げろ」と言われるのは嫌ですが、「実績が上がるとうれしい」「実績をあげたい」という気持ちは、人により度合いは違いますが誰にもあります。また、他人に成果を認められたいという気持ちも誰もが持っているものです。支店勉強会では、そのようなテラーの気持ちをくすぐることがとても大切になります。」

次の日に実績をあげてもらうために

①セールスする勇気を持ってもらい、②実績を上げるきっかけをつくり、③そして実績となったらすぐに褒める。支店勉強会を通じて、このような流れが実現できれば、その支店のモチベーションは上がってくるでしょう。

①セールスする勇気を持ってもらうには「ロールプレイング」が最も効果的です。その時、他のテラーの見本となるようなロールプレイを演じてもらう必要はありません。もちろん、見せしめのようなロールプレイングも止めましょう。やらされたテラーは、支店の役席にも本部担当者にも敵意が倍増し、さらにモチベーションが下がってしまいます。「ロールプレイング」で大事なことは、演じることではなくセールスの練習をし、セールスする自信を持ってもらうことです。「この資料を使って、こうやって話せば、こんなに簡単にセールスできるんだ」「意外と簡単に話せた」「これなら私でもできる」という自信と「明日、早速チャレンジしてみよう」という勇気を持ってもらえればしめたものです。

②実績を上げるきっかけをつくるには、「明日は、必ず実績が上がります。実績が上がったら、私の携帯電話にお昼までに連絡してください」というような暗示と約束をしましょう。この暗示の効力を上げるには「必ず次の日の実績が上がるようにする」という講師側の意気込みや次の日が休みである金曜日の夕方の勉強会を避けることなどが大切です。今まで全く実績が上がらなかったテラーから「実績が上がりました。」と連絡があると本当にうれしかったですね。

③支店勉強会のフォローとして実績を上げたテラーを褒め、「本部担当者が自分に気を掛けてくれている」と感じさせることは、モチベーションを上げるには非常に効果的です。特に、店頭販売実績が悪い支店の多くは、店内のコミュニケーションが不足しています。店全体のコミュニケーション不足まで改善することは難しいと思いますが、「○○さん、がんばっていますね」と声を掛け、彼女たちに次のセールスをさせる原動力を与えるフォローをするのです。

リーダーとなるテラーに対して

「周りの上席などが無関心を装い、1人のテラーにプレッシャーをかけさせている」こんな状況は最悪です。そんな支店のテラーリーダーは、「自分だけが一生懸命セールスするのはばかばかしい」と思い、実力があるのに販売実績は上がらず、モチベーションも下がりっぱなしです。しかし、彼女も他の支店のテラーと同じように「実績が上がるとうれしい」「実績をあげたい」という気持ちがあります。

支店勉強会を行う本部担当者の役割は、彼女の気持ちを上席者や周りのテラーに代わって伝え、彼女がリーダーとしてチャレンジするきっかけを与えることです。

支店勉強会だけでその支店のマネジメントまで変えることはできません。しかし、一人ひとりのテラーのモチベーションを少しずつ上げることはできます。でも、いちばんモチベーションが上がっていったのは、一生懸命頑張っている支店やテラーと仕事をさせていただいた私だったかもしれません。

第09回 テラー研修成功のポイント1

研修はテラーをこう変えた

2001年7月、私にとって一番思い入れが深く、また店頭の販売実績に一番影響を与えた「テラー向けスキルアップ研修」がスタートしました。紆余曲折もありましたが、2年後には以下のような効果が現れてきました。

①講師が「ロールプレイを5分間、始めてください」と言えば、その場で初めて顔を合わせたメンバーが相手でも、躊躇なくロールプレイが始まるようになっていた。

②最近の成功事例についてのグループディスカッションが、いつまでも話題が尽きないくらい盛り上がっていた。

③休憩時間になっても受講者同士が、業務推進上の悩みや愚痴などを年齢や地域を越えて話し合っていた。

④受講者間のスキルや意欲の差が、ほとんど感じられなくなってきた。

⑤若手の中に、ベテランをリードする意欲の高い行員が出てきた。

こうして、かつては何に対しても「出来ない理由」しか言わなかったベテラン行員が、驚くほど明るく真剣に、ロールプレイに取り組むようになっていったのです。

「Q9 テラー向け研修が成功した要因は何だったのでしょうか?」
「A9 明確なコンセプトを持ち、実行したこと。これに尽きるでしょう。」


3つのコンセプト

研修を成功に導いたコンセプトは、大きく3つの改革に分けることができます。

1.意識の改革
①この業務で女性は活躍できる――男性より実績を上げ、会社から必要な行員と思われる仕事はこの分野です。一緒に頑張りましょう。

②豊かな老後のためには投資が重要――将来の不安に備え、自分の資産の管理・運用を真剣に考えましょう。

③お客様を不幸にする商品でない――購入するかしないか決めるのはお客様です。投信を薦めるのはお客様のためという自信を持って、セールスしましょう。

2.研修方法の改革
①本部の自己満足的な研修からの脱却――楽しく、かつ厳しい「参加型研修プログラム」を作成し、単なる講義は行わない。

②常に実戦的であること――基本は一日中、ロールプレイとディスカッション。目標は「翌日にはセールスし、成約できる」こと。

③継続的な研修――1 度受講すれば資格を与えるような研修ではなく、テラーを続ける以上は永遠に受け続けなければならない継続的研修を目指した。

④外部講師の活用――内部スタッフは研修のプロデュースに徹し、特に知識の不足している分野の講習や研修資料の作成はプロに任せる。

3.セールス手法の改革
①新しいセールス技術の習得――昔の優秀テラーの手法にとらわれることなく、積極的に新しいセールス技術を身につける。

②お客様の話を聞くことの大切さを強調――しゃべりのうまい人が、良いセールスレディーではない。
話のスムーズさを競うロールプレイの否定。

③販売支援ツールの活用――販売支援ツールの活用は大切なセールススキルであることを強調し、優れた「販売支援ツール」を効果的に使いこなすことの重要性を、ロールプレイを通じて浸透させる。

④成功事例と失敗例の共有化――グループディスカッションを積極的に導入して悩みや問題点を共有化し、誰もがセールスをすれば販売できる雰囲気をつくる。

以上のようなコンセプトで研修を実施しましたが、これ以外にも研修が成功した要因があります。

それは、次回。

第10回 テラー研修成功のポイント2

集合研修には賛否両論が……

支店の人繰りや本部講師の確保など人的なコストのかかる集合研修には、批判的な意見も少なくありません。新商品の導入に伴う資格取得や事務処理方法など必要最低限の研修でさえ負担になっているのですから、テラーのスキルアップのために1人の行員を年に4回も招集する集合研修には賛否両論がありました。

しかし現在もすべてのテラー(400名)に対し、年間4回の研修を実施しています。研修は効果を上げるため20名程度で行いますから、年間70回も同様の研修を行うことになります。

「Q10 集合研修が規模を拡大して継続されるようになったのは、なぜでしょうか?」
「A10 販売実績が伸びればもう必要ないと言われないように、研修内容は随分工夫しました。」


ある研修の例

実戦的な研修といえばすぐ「ロールプレイング」が連想されますが、その前に商品の理解力を高めたり、顧客のニーズを引き出す考え方も理解してもらわなければなりません。そのような研修の例として、ポストイットを活用した「ブレーンストーミング」があります。以下は、具体的な研修の進め方です。

★研修の目的――為替の変動に影響を受ける3商品(ドル建て債券に投資する投資信託、外貨預金、ドル建て定額年金保険)の特徴と、そのセールスポイントを理解する
★人数――6名×4グループ

①3色のポストイット(7×12cm程度)とサインペンを用意する。

②まずはアンケート。「いま手元に300万円があります。今日から投資をする場合、あなたなら何を選びますか」。現状の知識の中でどんな商品が好みか、受講者に聞いてみます。

③アンケートの結果、外債ファンド15名、外貨預金6名、外貨建て年金保険3名となりました。その人数をホワイトボードに書きとめます。

④ポストイットの活用。最初に外債ファンドの良い点を、ピンクのポストイットに3分間でできるだけ多く記入させます。

【注意点:事柄1つにつき1枚使用する。1人5枚以上を目標。パンフレットなど見ても構わないが、短時間に集中して考えさせる。時間は、受講者のレベルに応じて短縮してもいい】
⑤続いてピンクのポストイットに外債ファンドの悪い点、黄色のポストイットに外貨預金、青色のポストイットに外貨建て年金保険の良い点・悪い点を、順に記入させる。

⑥それぞれが記入したポストイットを3商品の良い点・悪い点に分けて、模造紙に貼り付ける。これによって各商品に対する他人の考え方を知ることができ、セールスの幅が広がっていく。

【注意点:同様の事柄は重ねて、似たような事柄は並べるなど整理しながら貼り付けるようにする】
⑦グループ単位でブレーンストーミング。次に、それぞれの商品はどんな顧客に合っているのかをグループで考えさせる。

【注意点:時間がない場合は、1商品だけに絞ってもいい】
⑧おのおのの商品の良い点・悪い点、対象となる顧客について、グループの代表に発表させる。講師は発表を聞きながら足りない部分を補足し、ホワイトボードにまとめていく。

⑨最後にもう一度、「いま手元に300 万円があります……あなたなら何を選びますか?」と、同じ質問をする。すると必ず最初の答と違いがでるので、以下のようなまとめを行います。

「同じように為替の影響を受ける商品でも、色々な特徴があります。一方でこんなに選択肢があるのに、テラーの得意な商品だけをセールスされたお客様は不幸だと思いませんか」

「では次のパートでは、みなさんの理解度がいちばん高まった外貨建て年金保険について、ロールプレイングを始めましょう」

いかがですか。ロールプレイングへの取り組みが随分変わってきたと思いませんか。

第11回 テラー研修成功のポイント3

刺激的な集合研修を目指して

1人の受講者の高いモチベーションを複数の受講者に伝播させ、その受講者同士のモチベーションを刺激することで、さらに高いモチベーションを創造させる。こんな研修ができないかと、いつも考えていました。
「Q11 モチベーションを刺激するために行った研修の方法とは?
「A11 嫌がるテラーもいましたが、販売実績の順番で研修の受講班を決めました。」

メンバーの入れ替え戦は頻繁に

第7回で担当者ごとの販売実績ランキングを社内LANに公表したことをお話しましたが、研修の班編成も、その販売実績順に上級、中級、初級と分けて行いました。

半期ごとに班編成を見直しましたが、上級が有名なテラーで占められることなく、若手や今まで運に恵まれなかったテラーもどんどん上級に組み込まれてきました。もちろんランクダウンもありますから、常に違う顔ぶれで研修が行われていたことになります。

また「3名1 組のロールプレイング」や「6名で行うディスカッション」の研修でも、テーマごとにメンバーをシャッフルしました。なるべく多くの人と情報交換ができ、同時に緊張感を持続できるように工夫したわけです。

グループ編成を考える手間は大変でしたが、支店規模や入行年次が偏らないようにするだけでなく、テラーの性格まで考慮して行うと、受講者の間にカリキュラムや講師の力に関係なく好循環な刺激が生まれ、モチベーションが高まっていきました。

受講者も回を重ねるごとにこのようなやり方に慣れ、初めて会ったテラー同士でも臆することなくロールプレイやディスカッションができるようになりました。むろん前向きな話だけでなく、上司に対する愚痴などが少なくなかったことも事実ですが、ここまでくれば講師も大分楽ができます。

新鮮さを保つために

受講者が研修に慣れることは良いことですが、マンネリは馴れ合いに陥る危険性があります。そこで運用会社や保険会社の方にも、ずいぶん協力を仰ぎました。前回お話したブレーンストーミングのやり方なども、某保険会社の方にレクチャーいただいたものです。

社内研修に外部の人を入れることを気にする向きもありますが、積極的に取り入れるべきだと思います。社内の人間が言うと角が立つようなことも、外部講師に代弁してもらうと、受講者も素直に聞き入れる場合があります。

ただし丸投げはいけません。事前の打ち合わせと事後のフィードバックを徹底し、自由に意見交換できるパートナーシップを運用会社や保険会社の方と保つことが重要なのです。

研修の影響力は絶大です。講師のスキルアップも含め、研修は常に進化すべきものなのではないでしょうか。

変額年金(VA)も窓口で売る

2002 年11 月には、テラーのモチベーションを信じてVAの研修を導入しました。しかし当時は、定額年金保険は積極的に店頭でセールスするが、変額保険はテラーに売らせるべきでないという意見が、銀行本部のみならず保険会社にもありました。

そんな逆風の中、外部講師の強力なバックアップを得てVAの研修を決断したのですが、研修に慣れたテラー達は、非常に積極的にロールプレイングに取り組みはじめました。そして、男性渉外担当者に負けじと張り切るテラーたちのモチベーションの高まりは、すぐに販売実績となって表れました。

研修の社内PRも忘れずに

このような研修を続けていくには、社内PRも重要です。行内報や行内ビデオニュースで積極的に研修を取り上げてもらったり、受講したテラーに「研修のお陰で販売実績が上がった」と証言してもらうといった努力も欠かせません。「社内営業」は、本当に重要ですよ!

第12回 テラー研修成功のポイント4

成功を支えた講師とテラーの信頼関係

前回まで、研修を長く継続できた背景についてお話してきました。しかし研修が支持された原因は、決してそれだけではありません。

投資型金融商品は、銀行のマネジメント層にとって自ら販売経験のない商品であり、テラーとの意識のギャップが生まれやすい分野です。そのような環境下で販売員の苦労を理解し、適切なアドバイスをできる講師陣を得たことが、研修成功の最大の要因といえるかもしれません。そうした中、テラーの味方(悪魔のように見えたかもしれませんが)を自負していた私たちに、予想外の副産物がありました。

「Q12 予想外の副産物とは何でしょう?」
「A12 研修を制する者は情報を制す。テラーの様々な声を聞きくことで、現場の情報をタイムリーに得ることができました。」

さらに、トップダウンではなくボトムアップで情報を伝えること、つまりテラーを通じて全店に必要な情報を伝えることも、効率的にできるようになったのです。

情報の収集・発信は研修から

本部にいると現場の的確な情報を得るのは非常に難しく、一部の誤った情報が現場の意見としてまかり通ることもありがちです。研修を行うことは、そのような間違った情報を否定できる情報ソースを持つことにほかなりません。

具体的には、業務推進上の問題点の洗い出しをグループディスカッションのテーマにする方法などがあります。当然ながら、そのまとめを活用すれば営業戦略上のソリューションになりますし、個々の情報からは推進に否定的な支店なども把握でき、「押しかけ勉強会」のリスト作りにも役立ちます。

また研修の場を利用すれば、全店に向けた商品やキャンペーンのプロモーションを効率的に行うこともできます(前回お話したVAの導入時にも、この方法をとりました)。

逆に新商品を導入する際のマーケティングも、研修を通じて行うことができます。「こんな商品があったら買いたいと思いますか」「この商品はお客様に勧めたいと思いますか」といった簡単なアンケートでも、研修がなければなかなか実施できないものです。

営業ツールのマーケティングも可能

「真に有効なツールとはどんなものか」「このツールで、分散投資の必要性が理解できるのか」――多くの本部担当者が、こうした疑問を抱いているのではないでしょうか。そんな時は、試作段階でも構わないので、そのツールを使ったロールプレイングをカリキュラムに組み込むことをお勧めします。

すると、「本当に使われるのか」「改良点はどこか」などを実践的に把握することができます。面白いことに、研修でセールスストーリーがイメージできると、「早くそのツールでセールスしたい」という欲求も生まれてきます。

さらに次の研修カリキュラムでも同じツールを使用すれば、そのツールによる成功体験を他のテラーに伝えることができます。そして、新しいツールの使い方を理解したテラーが使い始める。こんな好循環が生まれるかもしれません。

コンプライアンスの徹底

当初はセールス中心の研修でしたが、販売実績が伸びてくると、コンプライアンスを考えた事例研究なども研修テーマに取り入れました。

テラーが、普段コンプライアンスに則ったセールスをしているかどうかをチェックできるのも実戦的な研修だからこそです。実績上位者でも誤解を与えるセールスしている場合もあります。そのようなテラーには、研修で的確な指摘をし、正攻法でお客様に接しているテラーのセールスを見て学んでもらうのです。

本当に販売員のことを考えるなら、誤解を与えるセールスをさせないことが重要です。そうした指導の徹底から、講師とテラーの一層の信頼関係が生まれるのではないでしょうか。

第13回 窓販における課題1

自らの反省を踏まえて

前回までは研修の実際について、いろいろお話してきました。ここからの3回は、自らの反省も踏まえ、今後の窓販でこんなことができたらというような話をさせていただきます。

投資信託や個人年金保険といった商品は、それを販売する銀行の財務内容などによって価値が左右されるものはありません。また一時的な先行メリットはあってもすぐに他社が追随してくるため類似した商品も多く、商品内容で差別化することが難しいものです。つまり、このような商品を販売するリテール営業に求められるスキルとは、本来非常に高度なものといえるのではないでしょうか。

さらに今後、投資に関して目が肥えてきたお客様や、インターネットでリサーチしたりすることに慣れている団塊の世代のお客様が増えてくれば、販売員のスキルに対する期待値はいっそう高くなります。

しかし今までの銀行では、法人営業に比べリテール営業に期待されるスキルは低かったですし、いまだそのように誤解をしている人たちも少なくないと思われます。

リテール営業の時代がやってくる

リテール営業とは、銀行業務の中でも最もカウンセリングやコンサルティングのスキルが求められる業務であり、そこで実力を発揮している営業員が銀行内で注目の的となるのはもちろん、どの企業からも引っ張りだこになる時代が、すぐそこまで来ています。

「Q13 そのような認識に立って、今いちばん後悔していること、それは何でしょう?」
「A13 それは、プッシュ型のセールススキルに注力しすぎたことです。」


2001 年ごろからの販売実績の積み重ねがなければ、今のように「店頭は投資型金融商品の重要なチャネルである」とか、「店頭販売比率を上げる」などという言葉が頻繁に語られるようにはならかったでしょう。

いくぶん言い訳になりますが、投資型金融商品に関して何の知識も経験もないテラーがそこまでの実績を上げ、販売する勇気と喜びをわかるようになるには、画一的なプッシュセールスを徹底的にトレーニングする以外に方法はなかったのです。

そのために「すぐに売れる」「簡単に売れる」ことに傾注しすぎて、よりいっそうの顧客満足を提供できる研修などはなかなかできませんでした。(現在は研修も進化して、そのような方向に向かっているようです)

プッシュセールスだけでは行き詰る

店頭販売が組織的に順調に推移してくれば、実績の期待値もどんどん上がってきます。そのような時に画一的なプッシュセールスしか手段がなければ、テラーたちは精神的にだんだん疲弊し、モチベーションも下がっていくでしょう。

そろそろ、すべてのテラーが「100 万円で毎月○○円の分配金が期待できます」から一歩踏み出して、顧客満足をより高める提案をするにはどのような手法があるのかを、真剣に考える時が来たのではないでしょうか。

最高の顧客満足を提供するには

お客様に最高の満足を提供できれば、クレームなどから販売員を守ることになり、販売員の地位の向上にもつながります。そして、ノルマに追われつつも一所懸命頑張っている販売員たちのモチベーションを、さらに高めることもできるでしょう。

販売員にとっての最高の喜びは、上司に誉められることよりも、お客様に本当に感謝されていると実感できた時なのですから。

ではどうすれば、最高の顧客満足を提供できるスキルを身につけることができるのでしょうか。このことについては持論がありますので、次回にお話させていただきます。ただ、非常に難しい問題ですので、ご期待に応えられるかどうかわかりませんが……。

第14回 窓販における課題2

入り口はプッシュセールスでも

預金しか経験のないお客様が、テラーの努力で初めて投資型金融商品を購入しました。さて、その後のフォローはきちんとできていますか。

店頭販売が増え顧客の数が増えれば、販売担当者がすべてのお客様をきめ細かくフォローできないのは仕方ないと私は考えますが、いかがですか。確かに、理想は証券会社のような担当者制でしょうが……。

「Q14 人やお金をかけず、効果的にアフターフォローができる方法はないでしょうか?」 「A14 一般的にはコールセンターやインターネットを通じた情報提供が、アフターフォローの主流でしょう。しかし、私が個人部所属時代にやりたくても実現できなかった方法は、そんな大掛かりなことではありません。それは、①法定帳簿類の活用、②セミナー講師の育成、③VTRの活用、の3点でした。」

法廷帳簿類の活用

法定帳簿類には、取引報告書、取引残高報告書、収益分配金のご案内等があります。世間の常識で考えれば、読めばすぐに理解できる書類が送付されるべきですが、法定用語などが多く非常にわかりにくいのはご存じのとおり。「取引報告書の見方」などという冊子が存在するのもナンセンスです。

しかも、それらを相当の郵送コストをかけて、かなりの頻度で送っています(毎月分配型のファンドの保有者が10 万人いれば、郵送コスト=年間10 万人×60 円×12 回=7200 万円にもなります)。

もちろん法廷帳簿の書式を変えることは困難ですが、せめてお客様が楽しみにされている分配金のお知らせなどに、クレジットカードの利用明細のようにDMを同封してみてはいかがでしょうか。一律同じ案内をするのもよし、あるいはセグメントして、キャンペーンや新商品の紹介、セミナーの案内などをすれば、様々なクロスセルができるかもしれません。

セミナー講師の育成

既購入者向けのセミナーは、運用会社や保険会社に講師をお願いして、かなりの回数を実施しました。商品内容の再確認にもなり、ご不満をお持ちのお客様のフォローにもなるため、おおむねご好評をいただきました。

このようなセミナーもむろん大事ですが、私が実施したかったのは、支店担当者をセミナー講師に育成することでした。支店担当者に自らセミナーを企画する自主性を植えつけ、今までの銀行員にないスキルを身につけさせることが、個人にとっても会社にとっても大きな財産になると考えたからです。

運用会社や保険会社では、プレゼンテーションスキルの習得など、研修の仕組みが充実しています。銀行もそのようなノウハウをご教授いただき、優れた人材を年間数人ずつでも育成することが、今後のアフターフォロー体制に有効ではないでしょうか。

VTR(映像)の活用

ご家族の反対が原因で、投資型金融商品の契約ができなかった――こんなケースは意外と多いものですが、それを回避するする手段としてVTRを活用してみてはいかがでしょうか。

例えば「こちらをご家族でご覧ください。そしてなおご不明な点がありましたら、ご家族ご一緒にご来店下さい」。そう言って、商品案内のVTRやDVDをお渡しするような感じです。

テラーでも説明が難しいものを、お客様がご家族に説得するのは無理があります。また今後、いっそう説明の難しい商品が登場してきても、対面セールスを補強するツールとして活用できるのではないでしょうか(ただし映像だけで完結するなどと、決して夢見ないこと)。また、自行のHPやATMコーナー、プラズマディスプレイなどでご覧いただけるようにしてもいいかもしれません。

次回は、いよいよ最終回です。

第15回 (最終回) 窓販での課題3

プッシュセールスから抜け出すには、知識の修得しかない

研修中に「なぜ日経を読まないの?」と聞くと、「書いてある言葉が理解できないから、読んでもつまらない」という答が返ってきました。

研修を受講する日だけ、特別に日経新聞を買う――今でも多くのテラーが、そんな感じだと想像されますが、モチベーションを高めたテラーがプッシュセールスから脱却し、最高の顧客満足を提供するには、やはり知識不足を克服しなければなりません。

しかし、この最も難しい課題は、1人当たり年4回の研修だけでは果たせませんでした。研修は、経験やセールステクニックを伝え、モチベーションを維持するには効果的ですが、新鮮な知識を脳にインプットすることはできないからです。

「Q15 テラーたちに、日常的に知識をインプットする方法はあるのでしょうか?」
「A15 彼女たちに知識を修得させるために、毎日の経済指標をノートに転記させたり、支店でのマーケット情報の読み合わせを奨励したり、自分でも投資することを勧めたり、いろいろチャレンジしてみました。しかし結局のところ、仕事で無理やりやらされているという意識はなかなか拭えません。」

難題を解くのにはもう少し時間が

「私は、日経を摂っている」というCMがあります。食事やサプリメントと同様、経済情報なども習慣的に摂取できるようになることが、知識を修得する最善の方法だと私は考えます。

では、彼女たちが自主的に動き始めるための方法とは? 残念ながら今も試行錯誤の連続で、これといった確かな方法は見つかりません。

もし、こんなものがあれば……

そこで、この場を借りて、Q15 に答えるための私の取り組みをご紹介したいと思います。

私はまず、この難問を解くために従来の発想とは違う「知識を供給するインフラ」が必要だという仮説を立てました。

それは①自尊心を傷つけず(「あー簡単なんだ」と感じさせ)、②強制されている感じがなく(自ら進んで楽しめる)、③競争心を刺激する(負けず嫌いを利用する)もので、なおかつ④無料ないしわずかなコストで手に入るものであれば申し分ありません。そこで到達した結論が、ケータイ(携帯電話)の利用です。

GDP、FRBといった見慣れない言葉も、毎日のように目にすれば自然に理解ができます。株式市場の動きなども、「8月8日、衆議院の解散が決まりました。さて、その日の株価は次のどれ?――

①上がった、②下がった、③変わらない」。こんな問題に数多く接することで、マーケットの基礎知識を感覚的に理解できるのではないでしょうか。

このように毎日繰り返すドリルのようなもので、テラーが嫌がらずに利用するサイトができないかと考え、「窓販テラー向け携帯サイト」をテスト的に運営しています(むろん男性にも十分満足いただける内容です)。占いやプレゼント、ブログなども取り入れた気楽なサイトですので、ぜひ一度、アクセスしてみてください。

お伝えしたかったことは……

この連載も今回が最終回ですが、私がお伝えしたかったのは、いまだ店頭での販売が主力となっていない金融機関でも、数年で1000 倍の売上増を達成できるということです。

この記事が売り上げ1000 倍計画の参考になったかどうかは自信がありませんが、お話したようなことの繰り返しでここまでできたということは、ぜひご理解ください。

最後に、貴重な経験をさせていただいた前職場の皆様や、運用会社、保険会社の皆様に改めて感謝いたします。

今までの連載の内容などについては、下記までお気軽にお問い合わせください。長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。