Vol. 02

投資型金融商品を伸ばす「店頭営業体制」の作り方 「第2回 店頭販売の優位性」

CATEGORY
近代セールス
DATE
2006.04.01

“店頭チャネルを重要視する銀行が増えてきた”

05 年2月に窓販マーケティング研究会が地銀および第二地銀を対象に行ったアンケート調査によると、「現在、投信販売に非常に影響を与えている販売チャネル」は「渉外」が73.24%、「店頭」が21.13%であり、また、店頭販売は投信の販売実績に「影響ない」もしくは「どちらともいえない」との答えが合わせて26.75%を占めています(図1参照)。このような調査結果からも、現在の地銀・第二地銀の投資型金融商品の主力販売チャネルは「渉外」であることが確認できるでしょう。

しかし一方で、いち早く投信販売を始めた投信残高の多い銀行ほど「非常に影響を与えている」「やや影響を与えている」といった回答の比率が高くなっていることも事実で、また近年の新卒採用でも明らかに店頭販売を意識した女性の採用が増えているなど、「店頭」は重要な販売チャネルとして認識されつつあるようです。最近の業界紙などで投資型金融商品の戦略を語るとき、しばしば「店頭販売比率」という言葉が使われるようになってきたことも、その傾向を裏づけています。

かつて私が在籍していた銀行でも窓販開始当初(01 年頃まで)は、投資型金融商品を販売するのは「渉外」の仕事だと考えられていました。そして「店頭」には、「待ち時間の短縮」や「ATMなどへの誘導」といった「従来業務の効率化」が重要な任務として期待されていました。もちろん、投資型金融商品の店頭販売比率などという言葉も存在していませんでした。

しかし今、収益力を高めるための重要な戦略として「店頭販売」がクローズアップされ、多くの銀行がその戦略に注目しているようです。ではなぜ、これほどまでに店頭チャネルが重要視されるようになったのでしょうか。まずは、渉外と比較した店頭販売の優位点について考えてみましょう。

渉外に比べ店頭販売の優位な点とは?

各地の「店舗網と、そこに常駐する女性行員を活用して収益の拡大を図るビジネスモデル」は、地域に根ざした金融機関が投資型金融商品を販売する上できわめて有効な戦略だといえます。私が在籍していた銀行では、今でも100 店以上の店舗に常駐する300 人以上のテラーが、毎月80 億円以上の投資型金融商品を販売し、ナンバーワン・テラーは年間に12 億円もの販売実績を上げているようです。では店頭販売は、渉外に比べどんな点が優れているのでしょうか。

“今いる人材を活かすことができる”

投資型金融商品の販売においては、実績のある有名テラーや評判の高い行員だけでなく、それまで運に恵まれなかった人達にも急にスポットライトが当たりはじめました。つまりこの業務は、研修やセールスの仕組みさえ用意できれば、今いる人材を活かして実績を上げることも可能だということです。そしてそれは、埋もれた人材の発掘であり、再生でもあります。経験者の中途採用も短期的には有効ですが、現有のマンパワーで活用できるのが店頭販売なのです。

“渉外のいない出張所も戦力になる”

法人中心の店舗は別として、個人預金を扱う店舗であれば、渉外がいなくても販売実績を上げることができます。つまり出張所なども、戦力としては重要な存在になりうるわけです。最近、店頭販売を前提に新しい店舗戦略を打ち出す金融機関が増えています。今後はこの業務とローンだけの少人数のリテール店舗が、どんどん増えていくことでしょう(スーパーなどの営業時間に合わせて土日出勤が増えるかもしれませんが……)。

“クロスセル、アップセルの機会が広がる”

店頭販売では1 件当たりの販売額が少ないため、多くの場合、顧客に十分な投資余力が残ります。

そのため新商品の発売時やマーケット環境の動いた時などが、常にセールスチャンスになりえるのです。逆に渉外による訪問販売は1件当たりの販売額が大きく、顧客の投資余力を奪う場合も少なくありません。いきおい顧客の負うリスクも大きくなり、販売方法やフォローの仕方によっては顧客を失うことさえあります。

“資産残高が安定する”

渉外に比べ販売件数や顧客数が多いことは、積み重ねられた資産残高が一度に解約される確率が低いことになります。それは、窓販開始当初は意識されていなかった「投信の信託報酬」が収益として「価値ある数字」となった時、しみじみと実感されることなのでしょう。ちなみに私の在籍していた銀行では、投信の信託報酬がすでに数十億円に達しているようです。あの当時からの積み重ねが、着実に大きな実績となっています。

“問題セールスが減り、事故やクレームも少ない”

常に情報端末が利用できるなど、渉外に比べると「身近にある情報」の量は格段に違います。また、本部や上席にもすぐに相談できる環境にあるため、誤解を与えるセールスを行う確率が低く、コンプライアンス上も問題のない販売が期待できます。販売員のスキルにもよりますが、通常は事故やクレームも少なく、書類上の不備などをその場で解消できることも、店頭販売の優れた点でしょう。

“販売額のぶれが小さい”

たとえ1人当たりの平均販売額が1百万円であっても構わないのです。店頭販売が浸透し、全支店のすべてのテラーがセールスすることで、日々のマーケット環境にもほとんど影響を受けない安定した販売実績が期待できるようになります。また融資業務などを兼業している渉外に比べ、業務に集中できる環境にあることも、季節要因などに左右さない安定した販売額が期待できる要因の一つだといえます。

“セールス機会が圧倒的に多い”

これがおそらく、店頭販売の最も優れている点でしょう。100 店舗の平均3 名のテラーが1 日10人の顧客に対し新商品を1 ヵ月セールスすると、100 店×3 名×10 人×20 日=6 万人、20 人にセールスすると12 万人の顧客に商品を紹介できます。渉外によるセールスに比べて商品の提案機会が圧倒的に多く、投資型金融商品を買っていただく可能性も必然的に高くなります。どんな広告よりも、店頭での声掛けに勝るマーケティングはありません。

以上が、私が経験上感じてきた「店頭販売の優位性」です。支店の担当者と一緒に住宅街やマンションなどにお住まいの退職者の方をお尋ねするときなど、訪問による提案を拒まれるケースが少なくありませんでした。逆に、そのような層に商品を提案するときは、ご夫婦で来店された場合の方が約定する確立は高かったように記憶しています。皆さんはどうですか?

ただし、店頭販売にも問題点はたくさんあります。次回は、「店頭販売の課題」についてお話しましょう。

BACK NUMBER