Vol. 02

つみたてNISAは「継続率」で勝負を

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ファンド情報
DATE
2017.10.06

つみたてNISAの口座開設の申込み受付が、10月2日から始まった。これは少額からの「長期・積立・分散」投資を通じて、資産形成を国民に広く普及させるための金融庁〝肝煎り〟の制度だ。多くの金融機関は、2018年1月の制度開始に向けて業績評価指標(KPI)として、金融機関全体と各支店のつみたてNISAの「獲得件数目標」を決めるはずだ。しかし、物事は始めるよりも続けることの方が難しいものだ。自分の意志で投資を始める利用者が多いインターネット専業の証券会社でも、積み立て投資を数カ月でやめてしまう顧客が多いという。実際、一度でも投資をすれば「稼働」としてカウントする現行NISAの稼働率は、いまだに60%程度にとどまっている。

では、つみたてNISAの継続率を高めるにはどうすればよいか。第1に、KPIに「継続率」を加えることを提案したい。前提となる継続率の定義は、業界全体で決めてはどうか。ぜひ、1年、2年、3年と期間別の継続率をKPIとして、制度がスタートする前に決めてほしい。次に、積み立て投資を始める前の提案内容が重要だ。一般的に積み立ての有効性を伝えるには、「時間分散投資」「ドルコスト平均法」「長期投資」などを説明するケースが多い。それに付け加えてほしいのが、「含み損を抱えた場合」と「含み益を抱えた場合」の対処法だ。

途中で投資を止めてしまう理由には、「せっかく始めた積み立てで損をしたから」というものが多い。含み損を抱えた場合でも、購入した投資信託の基準価額が今後、上がると考えるのであれば「多くの口数を買える喜ばしいタイミング」であり、今後上がらないと考えるのであれば「投資先を再検討するタイミング」であることを、積み立てを始める前に伝えるべきだ。

一方、含み益を抱えた場合では、積み立て投資を継続しつつ、利益の一部を確定する選択肢があることを伝えてほしい。積み立ては完璧な投資方法ではなく、仮に20年間継続しても含み損を抱えるケースもあるからだ。この2点をあらかじめ伝えておけば、〝お付き合い〟で始めた顧客が積み立て投資で含み損を抱えたとしても納得感があり、継続率は上がるはずだ。

最後は、提案の「見せ方」の工夫だ。各金融機関は自ら掲げた「顧客本位の業務運営に関する原則」への「取組方針」に基づき、積み立て投資の有効性を顧客に理解してもらったうえで、現行NISAやiDeCo、特定口座といった複数の投資制度や商品を比較しながら説明することが求められる。

しかし、資産形成や有価証券投資の必要性を強く感じない未経験者に対し、制度や商品を説明し納得してもらうことは簡単ではない。ネットなどを活用すれば片付く問題でもない。提案スキルの低い販売員が提案に時間をかけたからといって顧客の納得感が高まるとは限らず、コストがかさむだけの場合もある。収益性の低いつみたてNISAを拡大するには、効率的な提案を実現する説明ツールや説明手法を考案する必要もあるだろう。基本的に少額の投資家を相手にする積み立て投資で、金融機関が預かり資産を積み上げるには、10年、20年という期間を要するだろう。こうした息の長いビジネスに乗り出す前に、積み立て投資の継続率を定義し、「顧客に伝えなければいけないこと」「継続率を高める効率的な提案手法」を構築してほしい。